桃太郎

先日のジェイ・チョウ(周杰倫)コンサートで、周杰倫がおばあさまに習ったという童謡「桃太郎」を歌っていた。
感動的なおばあさまのコメント後、いきなり「♪も~もたろさん~」と歌われたのには一瞬ずっこけたが、「あっ!」と気付いたことが。

台湾の芸能新聞などを見ると、日本(の特に男性)を指して“桃太郎”という言葉が使われる。台湾の女性アイドルが日本進出を果たしたときなど、「○○○征服桃太郎」などと書かれる。
以前はボーっと「へー、日本の男性のイメージって桃太郎なんだ~」と思っていたが、後になって分かったことがある。

実はその昔、桃太郎は日本軍国主義のシンボルだったのだ。

日本人で桃太郎のストーリーを知らない人はいないだろう。
川から流れてきた桃から生まれた桃太郎が犬・猿・雉をお供に従え、鬼を征伐するお話しだ。
この昔話《桃太郎》成立については諸説あり、ウィキペディア桃太郎に詳しいことが掲載されているので興味のある方はご一読下さい。
童謡「桃太郎」はこのお話しを元に作られたが作詞者は不詳となっている。(作曲は岡野貞一)

日本と台湾の関係を理解している人なら、なぜ周杰倫のおばあさまが日本語を話せるのか、日本の童謡「桃太郎」を周杰倫に歌って聞かせたのか分かるだろうが、日本は1895年から1945年まで、50年間の長きに渡り台湾を植民地支配していた。
この時代、人々は台湾の言葉(閩南語・国語・客家語・原住民語など)で話すことを許されず、学校では日本語を勉強した。
いや、させられた。

学校では台湾の言葉を話すと、棒で殴られたり、長時間立たされたりと体罰を加えられたそうだ。当然大人も公の場で台湾の言葉を話すことを禁じられていた。
植民地として文化的にも日本に支配され、皇民化教育の下、桃太郎の歌は人々に教えられた。
それはほほえましい童話ではなく、“鬼(=鬼畜米英)を征伐する勇ましい若者”として。

これについて私が知ったのは、何かのドキュメンタリーで「桃太郎 海の神兵」という戦時中のアニメ映画を見たからだ。
このアニメは海軍発注で松竹が製作したもので、勇ましい海軍将校の桃太郎が、犬・猿・雉の部下と共に白人に角を生やしたような“鬼”をやっつける話だ。
詳細は兵器生活文部省非推奨映画 「桃太郎 海の神兵」に詳しいが、まるまると可愛く愛らしい桃太郎や動物たちが兵器をぶっ放し戦争をするさまは、断片を見ただけでも戦時中の狂気を感じて恐ろしい。

終戦直前に公開されたため、この映画自体はあまり多くの人の目に触れることはなかったようだが、鬼退治のシンボルとして童謡「桃太郎」は被植民地に伝えられたのだ。

調べてみると台湾だけではなく、さらに南方のミクロネシアにまで童謡「桃太郎」は伝わっており、今もまだ残っているという。
宗教人類学・研究者、塩月亮子さんのサイト、塩月亮子(しおつき・りょうこ)のほーむぺーじにはこのような興味深い記述がある。
2. ヤップにみられる日本統治時代の名残り
(中略)
(2)言葉
 形あるものは早く失われるかもしれないが、目にみえないものは案外と残るものがあるようである。そのひとつが、言葉である。(中略)
なかでも「桃太郎さん」は有名で、今の小さい子どもたちにも意味はわからず歌い継がれている。
ヤップ島からの報告・日本・ヤップ関係小史


戦争から60年以上経った今も歌は残っている。
それは日本が文化侵略をした証でもある。

私はそれを決して忘れないし、もう二度と戦争をしないためにも自分の次の世代に語り継いでいきたいと思う。
その為にはもっと自分が知識を深めなくてはいけない、とまた改めて思う。

もちろんそれだけではなく、日本の古き佳き昔話や童謡、世界に誇るべき伝統文化も、学び伝えていきたいと思っている。

2/11追記:
過去のことを気にしない人は気にしなくてもかまわないと思います。
しかし歴史を知らないことは過去を「殺す」ことだと私は考えます。
過去を「生かす」(過ちを繰り返さない)ために、自国と関係国の歴史を知っておいて損はないと思います。
足を踏んだ側が「痛くなかったよな?」というのは傲慢だと思うだけ。桃太郎じゃなくてアソータローさんの発言とかね。

周杰倫自体は他意はないと思います。童謡「桃太郎」は彼にとっておばあさまとの思い出の歌でしょう。
雑感 > 港・台・中 : comments (7) : trackbacks (0) : 編輯 このエントリーを含むはてなブックマーク

comments

せんきち : 2006/02/11 01:14 AM
こんにちわ。
『桃太郎』、戦後の台湾で映画にもなっていますよ。
藍*ai : 2006/02/11 02:43 AM
初めてお邪魔致します。
桃太郎についてのお話、ありがとうございました。
やはり痛いですね・・・
jing : 2006/02/11 02:57 PM
>せんきちさん
体調大丈夫?
映画は87年の《新・桃太郎》(以降シリーズ化)ですかね?
昔レンタルビデオ屋で見かけて、「えー!台湾映画で桃太郎って!!」と思ったけど借りなかったんだよな~(笑)。
ご覧になりました?

>藍*aiさん
いらっしゃいませ~。
うーんと、個人的に“日本語を喋るお年寄り”ってのにいろいろと感情移入するところがありまして、彼ら自身はわりとあっけらかんと「昔は棒で叩かれたよ、わっはっはっ!」とか言うんですけどね。やっぱり胸が痛いですよ。
自虐史というのとは違うと思いますが、そこに確かにあった悪いことや、虐げられたり理不尽な暴力で痛めつけられた人がいたことを忘れちゃいけないと思うんです。
加害者側の人間として、もう二度と過ちを繰り返さないためにね。

桃太郎については歌い継がれ、映画にもなっているってことで台湾でも愛されていると思います。
たとえ為政者の意図や目的がどうであれ、愛されていなかったら残らないでしょう。
周杰倫のおばあさまは、自分の人生で覚えた歌を可愛い孫に歌って聞かせた。孫はそれを覚えていて、日本で歌った。それだけのことで、深い意味はないと思います。
あとは私たちがどう受け止めるか、というだけの話。
せんきち : 2006/02/11 10:08 PM
どもです。
明日から香港に行きます。内緒にしててスマソ。
桃太郎、1960年頃に台湾語映画で既に作られていたんですよ。
日本語世代が自作自演の桃太郎。
jing : 2006/02/11 10:55 PM
えっーーーーーー!それすごいですねっ!
しかも台湾語映画なんだ(驚)。そのころってまだ政府の縛りがキツかったんじゃ??
さすが、なんでも知ってる生き字引(推定年齢105才・嘘)。

香港楽しんできてくださいねー(^-^)
jing : 2006/02/11 10:56 PM
ごめんなさい、ウィキペディアのリンク改行が入ってたみたい。
今は修正してありますので、そのままご覧いただけます。
: 2009/09/07 09:15 AM
日本でもチムチムニーって歌う程度の話なのに

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