『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦
2006.07.12 Wednesday 01:49

この本はインタビューを書き起こした形式をとっているため、被害に遭われた方たちのつたない日本語がそのまま文字になっている。
母語の干渉か、彼女たちの言葉には特徴がある。
「同じくない」「おった」「おるでしょう」「~名(~人)」「あれ(あの人)」「馬鹿にされた(侮辱された)」「いかない(いけない)」など、山の人たちのぶっきらぼうな語りが耳元で聞こえてきそうだった。
今もお年寄りたちは日本の名前を使っているが、彼女たちには日本の名前がある。
それは私と同じ名前であったり、友人や親戚と同じ名前だ。
おそらく仮名だろうが私と同じ名前の人が騙されて連れて行かれ、暴行され、流産し、戦争が終わってからも罪悪感に苦しむ様子を読むのはつらかった。
原住民の社会は若い者は年長者に、女は男性に絶対服従だ。
とくにお年寄りの倫理観や貞操観念は、民族固有の物かそれとも当時の教育の影響かわからないが、日本の年寄りと同じで非常に厳しい。
それを考えると彼女たちが戦後いかに生きづらかったか、想像に難くない。